11月4日、日本でクライアントだったイギリス人Rさんのご自宅に招待されました。去年彼が東京に住んでいた時にも招待されたのですが、今度は彼の本拠地です。ご自宅は僕と同じくChelseaにあって、最寄駅もSouth Kensington。ロンドンで徒歩10分のご近所さんになるのだから、人生の縁って本当に不思議なものです。
さて、駅前でお土産に花を買って、約束の7時に着くように向かいました。少し早めですが、Rさんが娘3人に会わせたいとのことでこの時間。4歳、2歳半、6ヶ月の3人娘が就寝する頃のようです。奥さん共々出迎えてくれると、早速子供たちの寝室に案内されました。メイドが丁度寝かせ付けている真っ最中だったものの、まだ3人とも目がぱっちり。そこに僕みたいな見知らぬ人が現れたものだからもう大変です。見付けて、半分興奮状態になって大はしゃぎし始めました。それにしても、3人ともまるで印象派の絵から飛び出てきたかのような可愛いらしさです。ブロンドの髪、青くて大きい目。もう、そのまんまお人形さんみたいでした。
しばらく一緒に遊んでいたのですが、子供たちがはしゃぎ続けてきりがなかったので、後はメイドに任せて、Rさんと奥さんと3人で外に食事に行くことにしました。近所のパブレストランでディナーです。Rさんも奥さんも大手投資銀行のバンカー出身なので、日英の政治経済情勢から生活比較まで、共通の話題がたくさんあってとても楽しい時間を過ごすことができました。4時間くらい話続けていたのかな。
その中で特に印象に残った話題が2つあります。
まず1つ目。奥さんが日本食に飢えているようで、「日本人の味覚からしてもお薦めのロンドンの日本食レストランを教えて欲しい」と言われました。「フランスに美味しいミシュラン1つ星のレストランがありましたよ」と答えると、「ロンドンにはないと言いたいんでしょう」との指摘。図星でした。まさか「The Japanese Canteen」のカツカレーという訳にもいかないだろうし。
そして2つ目。こちらは真面目なのですが、丁度投票日当日だったこともあって、アメリカ大統領選挙の話題になりました。そこで、Rさんと奥さんから、「日本では、アメリカの大統領が黒人になるかもしれないということについて、どのように受け止められているのか」と質問されました。8月にこちらに来たのでそれ以降の状況についてはもちろん把握していませんが、少なくとも僕が知る限りにおいては、このような観点で今回の選挙を見た日本人は一般的には多くない思います。つまり2人からの質問は、「日本人も当然ながら含まれる有色人種が、今まで白人階級が常にリーダー的地位を占めていた世界最強国家アメリカ合衆国の大統領になることについて、どのような意義を感じるか」、ということです。このような疑問を呈してくるのは、白人、特にいかにもヨーロッパ的ではありますが、僕がコンプレックスを感じすぎているのでなければ、白人は間違いなく常に潜在的に自分たちが優越的であると信じているのです。Rさんは、イートン校、オックスフォード大学を出て、投資銀行でアジア太平洋地域を担当していました。教養及び異文化理解が進んでいることは間違いないのにこの反応、平均的な人々の受け止め方に至っては想像を絶するものがあるかもしれません。さて、オバマ大統領が今後どのようにこの世界観と対峙するのか非常に楽しみですが、日本人も自分たちの世界の中での位置付けについてもっと深く検討しなければならないと思います。今日支配的な世界秩序の中では、僕たち日本人は常に差別される側の立場であり続けるのですから。
まあ何はともあれ、とても充実した夜でした。Rさんとはきっと一生のお付き合いになるんだろうなあ。